札幌西高校文芸部活動日誌
西高文芸部員が気のみ気のまま付ける活動記録。個性溢れる文章で日々の活動を記録していければいいのだが、果たしていつまで続くのやら……
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- 2012.09.21 リレー小説「Library」4<倉橋涼音>
- 2011.08.01 リレー小説『Library』3 <秋永准>
- 2011.07.28 りれしょ2 <高城>
- 2011.03.12 Library(仮)
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リレー小説「Library」4<倉橋涼音>
「広輝!」
と、呼ぼうとした時のことだった。
「先輩、好きです」
そう言ったのは広輝と同じ、図書局の女の子。
「……俺も、好きだよ」
そう答えたのは広輝。嘘……嘘でしょ? 広輝に好きな子がいたなんて、知らなかった。知りたくなかった。私はすぐにその場から逃げ出そうとした。幸せそうな二人を見ているのがつらかったから。でも、そんな思いとは裏腹に、私は金縛りにあったかのように動けなくなっていた。いやだ、もう何も見たくない、何も知りたくない。今にも涙があふれ出してきそうだ。そんな中、広輝はその子を抱きしめた。いやだいやだいやだ。
「広輝っ!!」
あ、あれ? ここは……私の部屋? 私は今までのが全部夢だったのだと気付くまでに、少し時間がかかった。夢でよかった、と安心したのも束の間。枕元の目覚まし時計が目に入る。時刻は8時5分。やばい、遅刻する。私は焦って学校へ行く支度を始める。
「お母さん、なんで起こしてくれなかったのよ~!」
「何度も起こしたわよ。あんたが起きなかったんじゃない」
今こんなことを言っても誰も信じてくれないかもしれないが、私は寝起きはいいほうだ。寝坊なんて滅多にしない。じゃあなぜ今日は寝坊したのか。それは広輝のことが気になって、なかなか寝付けなかったからだ。あんな夢を見てしまったのもそう、全部広輝のことが気になるから。一昨日からずっと、そのことばかりが私の脳内を支配している。
そんなことを考えながら家を出ると、ちょうど隣の家から出てきた広輝と目が合う。なんというタイミング。いつもだったら広輝に会えてすごくうれしいはずなのに、今はあまりうれしくない。いつも通りじゃいられなくなってしまいそうだから。意識しすぎだな、と自分でも思う。でもあんな夢を見た後で、意識せずにいられるわけがない。
「……おはよ、七海」
「お、おはよ……」
気まずい沈黙が流れる。どうしよう、何か言わなきゃ。いつも通り、いつも通り……。そう思えば思うほど、どうすればいいのかわからなくなってしまう。
「七海、一昨日のことだけど」
先に口を開いたのは広輝だった。一昨日のこと。その言葉を聞いただけで、私は息が詰まりそうになった。きっと、いや絶対、告白の時のことだ。そのことはメールで一度聞かされた。告白した女の子のことや、その子に考えさせてくれって言ったこと。でも私はその時そのことには触れなかったし、広輝もそれ以上は何も言ってこなかった。それなのに今、このタイミングでその話をしてくるなんて。聞きたくない、何も。
「あ、私、急がなきゃ。遅刻しちゃう。広輝も急いだほうがいいよ!」
そう言い、私は走り出す。もちろん一昨日の話は気にならないわけではないのだけれど、それ以上に聞くのが怖かった。もし広輝と麻衣ちゃんが両想いだったら。考えるだけで怖いし、つらい。広輝は考えさせてくれって言ったらしいから、もうすでに付き合っているということはないと思う。でもこれからどうなるかはわからない。もし今朝の夢が現実になってしまったら。そんなことを考えると今にも涙があふれ出しそうになって、私は必死にそれをこらえながら学校へと走った。
リレー小説『Library』3 <秋永准>
りれしょ2 <高城>
図書館を出て家路を行く。広輝が私の少し前を歩いて、私は斜め後ろから彼を眺めていた。今日の広輝は何だか上機嫌だ。少し視線を降ろすと、彼の太ももくらいの所をその手が行き来している。ブラブラと左側だけ。右側は鞄を背負っているため塞がっている。私は自由に動いている左手を見て、自分の右手をグー、パー、グー、パー忙しなく動かした。握るべきか、放置すべきか。手は、繋ぎたい。でも、残念ながら私と彼とは理由なく手を繋ぐような仲ではない。グー、パー、グー、パー……私の右手はその形を定めかねていた。
と、突然彼の左手が動きを止めた。同時に、彼の歩みも止まる。私の目線も、彼の左手に集中していた。否、正確には左手に、ではない。その、上だ。広輝は自分の目の高さまでそっと左手を持ち上げていった。
「蝶だ」
呟いたのは、私。
「うん、蝶だね」
広輝もそれに相槌を打つ。
昔は蝶もよく見掛けたものだったけれど、最近はその機会が減ってきている。多分、空き地や荒れ地がマンションに変わった所為。
広輝の左手に止まった蝶は、黄色い羽を綺麗に二つ折にして身体を休めていた。パタリ、パタリと時折その羽が動く。ふと、小さい頃広輝と私で飼っていた揚羽蝶を思い出した。家が隣同士だった私達は、幼い頃からよく一緒に遊んでいた。その遊びの中には、夏場の虫獲りも含まれていて、揚羽蝶はその時に獲ったものだった。
「懐かしいね」
広輝が言う。「うん」と答える。広輝も、昔のことを思い出しているらしい。揚羽蝶は、当たり前だけど、もういない。あの頃の私達が一生懸命に世話をしていた蝶は、冬になる前に死んでしまった。
ふわりと、目の前の黄色い影が動く。「あ」と思わず声を上げる。黄色いその蝶は、彼の左手を離れてふわりと空に舞い上がった。ヒラリ、ヒラリとその羽を風に踊らせて、蝶は再び自然の中へと戻っていった。
広輝は何も無くなった左手を見詰めていた。
「紋黄蝶だったね」
「うん。紋黄蝶も、紋白蝶も……揚羽蝶も、見ないよね」
「うん」
住宅街の静けさが妙に辺りに染み付いていた。ちょっとだけ、昔を思い出してらしくもなく二人の間に湿った空気が流れた。居たたまれなくなって、私は態と大きな声で言った。
「それよりさ、早く帰って課題見せてよ! 広輝の写そうと思ってたから私まだ何もやってないんだから!」
「え、いや。ちょっとくらい自分でやれよ! ……っとに。しゃーねーなぁ七海は。いっつもそれだ」
「何よぅ! 一年の頃、家庭科の実技は殆ど私がやってやったじゃない」
会話が始まると、さっきまでのじめじめとした雰囲気は何処かにいってしまって、いつも通りの私達が其処にはいた。だけど、二人して各々の家に入るとき、一瞬だけ空を気にしてしまった私は、きっとかなり未練がましい女なのだ。蝶はいない。みんな、この町から離れていってしまった。もう、きっと彼等は戻って来ないのだろう。
広輝は昨日、告白された。
彼がどうするのか、私は知らない。蝶の行方も分からない。未来は分からない。明日も図書館で会って、一緒に帰るという日常を繰り返せるのか。私ははっきりと断定できない。昨日の告白事件が未来だった過去の私は、幼馴染みという関係に終わりが来るかもしれないなど、夢にも思わなかったのだから。
「またね」
「おう」
そして、私達は互いに自分の家に帰ったのだった。
by.高城 月
Library(仮)
ほんとに、あいつは勿体無い。いつの間にか、それがあいつに対する口癖になっていたのであった。
何が何だかさっぱりだったけれど、ぱらぱらと「ソクラテスの弁明」を眺めた。全く持って面白くない。読むのを諦め、本棚に戻そうとすると、突然横から伸びてきた手にひょいと抜かれてしまった。驚いて横を向くと、そこにはあいつが立っていた。
「七海って、こんな本読むんだな」
「もう、びっくりした」
拗ねてそっぽを向くと、ほっぺを人差し指で突かれた。
「広輝、何してんの?」
恥ずかしくなって、私は思わず声を響かせてしまった。周りの目が一斉にこっちを見た。
「帰ろっか」
広輝は少し気まずそうな顔して、小声でそう言うと、出口のほうへ歩きだした。
私もその後をこそこそと続いて出て行った。
執筆、コダマ黎歩